思考停止よりだめなこと




それは「下手な考え休むに似たり」ということです。ダイヤモンドの記事では、資本資産価格モデル(CAPM)やファーマ・フレンチのファクターモデルを紹介し、「CAPMやファクターモデルといったベーシックな指標の理解なくして、インデックス型ファンドを選択する個人投資家は少なくない」と批判しています。これはごもっともなのですが、でも、世の中の多くの人は金融理論の知識などないわけです。そういった人に、ファーマ・フレンチのファクターモデルを理解しないとならないというのは、非現実的ではないでしょうか。
むしろ、金融知識がない人が付け焼き刃でこうした理論を使おうとしても、それこそ「下手な考え休むに似たり」で、リターンが劣後する懸念があります。インデックスに勝つアクティブファンドがあるのは当然のことですが、事前にどのファンドが勝つか、さらに長期にわたって勝てるファンドを選ぶのは、きわめて困難です。それだったら「思考停止」のインデックスファンドのほうがよほどいいです。
また、森永さんは投資の勉強も必要だとしています。「投資の果実はお金だけだとは考えていない。市場を上回るリターンを出すべく、本を読んで勉強し、市場を観察し、個別企業の財務分析や業界・産業情報を足を使って稼ぎ、時には各国の経済指標から世界経済の動向を予測する。このような日々の努力によって、マーケット脳は育てられていく」と、熱く語ります。
でも、人生で、「個別企業の財務分析や業界・産業情報を足を使って稼ぎ」なんてことが役に立つ人はごく一部では。僕自身、サテライトで個別株やひふみなどのアクティブをもっていますが、娘と遊んでいたり、映画を観に行ったりするほうが投資の勉強よりよほど大切で、正直、そんなことに時間を使ってられません。マーケット脳が育たなくてもいいから、ほったらかしで資産が増えればそれでいいのです。
実は、今から10年前、FXや個別株投資にどっぷりとはまっていたころがあり、そのときは、財務分析からアメリカの雇用統計まで綿密に調べ、それこそ仕事の合間にトイレでチャートをチェックしたりとかしていました。今から観るとまったく無駄な時間だったと思います。僕のマーケット脳は、それこそ下手な考え休むに似たりだったのです。
もちろん、専業投資家や、経済に詳しい人にとっては、思考停止よりもご自身の思考をたっぷりとつかったほうがいいでしょうし、森永さんの言っていることは正論です。ただ、すべての人にそれを押しつけられてもなあというのが正直な気持ち。マルキールもエリスもスマートベータに懐疑的だし、というわけで、きょうも淡々と積立を続けていきます。