NHKスペシャル 介護殺人に憤り




実際に介護殺人をした当事者までインタビューして、取材はかなり大変だったことはわかります。番組では介護殺人の当事者のうち4分の1が介護を始めて1年以内というデータを紹介していました。まだ、介護になれていないうちに、殺人まで起こしてしまうのです。どうすれば防げたのか。行政、地域、家族、NPOなどさまざまな救いの綱があったはずです。でも、最後まで、ひたすら介護は大変だというばかり。参院選の前に流すというのもいやらしい。
同じNHKスペシャルでも、昨年、認知症で徘徊し、身元不明で保護された人を救うキャンペーンは行政の不備を具体的に指摘し、毎日新聞の報道などもあり、行政も対策を改善し、社会的に意義のある報道だったと思います。しかし、貧困問題の番組もそうですが、今回のNスペも、そういった具体的指摘はいっさいない。でも、こういう報道って、NHKや大新聞など大手マスコミは結構あるのですよね。きっと、これで、仕事をしたつもりになり、業界内の評価も高いのでしょう。
「ホテルルワンダ」という映画で、ルワンダの虐殺をアメリカのTVが取材して、これで世界から救いの手が伸びるとルワンダ人の主人公が喜んだら、先進国の人は「怖いねと言うだけでディナーを続ける」と何の助けにもならない話がありました。今、そのエピソードを思い出してます。この番組をみて、介護をしていない人は「怖いね」と思うだけだし、僕のように介護をしている人は、それはわかっているから、具体的な助けを教えてほしいと思うでしょう。
僕自身は介護殺人までは思い詰めていませんが、仕事にも悪影響がでて、介護のための泊まり込みが続いて、娘も寂しい思いをしています。自分自身の健康も悪化しています。もし、母が亡くなったら、ほっとするだろうなと思い、そのことを思い浮かべることもあります。また、僕に介護が集中しているので、弟をはじめ他の親類に対するうらみごともあります。でも、そう思った後は、必ず自分が嫌になる自己嫌悪に陥る。その繰り返し。幸い、認知症の進行がまだ進んでおらず、母との会話が成立することや、要介護1でとどまっていることで、番組に出てきたような悲惨なところまでいっていませんが、逆に言うと、いつまで続くのかわからないというのも重くのしかかります。こうした気持ちを救ってほしいと番組をみたのにがっかりしました。
昨日、番組の直後に感想をツイッターにあげたところ、めいろまさんがリツイートしてくれたほか、300件以上のリツイートがあり、180件のいいねが寄せられました。始めての経験です。それだけ、僕と同じように思っている人がおおいということでしょうか。