便利だけど混乱も? 金融庁の人に積立NISAを聞く




積立NISAは年間投資上限額60万円、非課税期間20年と、現行のNISAに比べて年間投資上限額は半分になる一方、非課税期間が大幅に伸びて、長期・分散投資のメリットを十分得られるようにしてあります。さらに、投資可能期間が平成35年までの時限措置だったNISAと違って、恒久化としています。
欧米に比べて日本の家計金融資産は現預金偏重です。そのため、過去20年でアメリカが3.1倍、イギリスが2.3倍と増えているのに対して、日本はわずか1.5倍にしかなっていません。このため、NISAは国民に分散投資をしてもらい、中長期的に安定リターンを実現してもらうのが目的でした。
しかし、制度が始まって3年間になりますが、若年層を中心にNISAの利用、特に積立はまだまだ少ないのが現状です。そこで、積立NISAをもうけて少額から積立投資ができることをアピール。多くの人へ利用してもらおうというもの。
制度の趣旨自体は結構なことで、投資をはじめていない人は、この制度を活用をするべしだと思います。ただ、僕のようにNISAをフルで利用している人にとっては、混乱しそうなところがあります。
まず、NISAと積立NISAは併用できないということ。つまり、積立NISAに乗り換えたら現行のNISAはできなくなります。でも、イギリスの例のように、NISAはいつかは恒久化されると思っていました。もしも将来NISAが恒久化されれば、枠が減るだけだから意味がありません。将来の制度が不透明なのに、乗り換えるかどうか悩ましいところです。
また、投資対象商品は「長期の積立・分散投資に適した一定の投資商品」とありますけど、これが具体的にどのようなものかもよくわかりません。金融機関からすると、積立NISA向けのシステムへの設備投資は結構負担になるでしょう。このへんの商品はどうなるのかな。
一方、既存NISAについては、ロールオーバー時に課税口座へ払い出す際、含み損がでていても、そもそもの取得価額で計算されるという、恐ろしく太っ腹な改正要望がでていました。NISAは損益通算ができないので、例えば100万円で買った株が80万円になって課税口座に払い出すと、その取得価額は80万円となり、もとの100万円に戻って売却したら、20万円分が課税されることになります。投資家からすれば100万円投資して利益は0円なのに4万円強も税金をとられる仕組みですね。それを無くすというのです。
とりあえず、まだ税制改正への要望の段階で、年末の税調や予算原案をへて、さらに来年初頭の国会という手続きがあります。制度がどうかわるかもうちょっと見極めたいと思います。
勉強会には経済評論家の山崎元さんも来られて、金融庁の方に、ドルコスト法は気休めでしかないということを説いていました。こういう専門家同士の話を横で聞けたのも、何か得した気がします。rennyさん、竹川美奈子さんら貴重な機会を作ってくれた幹事に感謝します。